当社グループは、2026年5月に「グループ中期経営計画 FY2026-2028」を発表いたしました。
本ページではその内容についてご紹介いたします。
現行の中期経営計画(2024年5月公表)では、2024年3月期から2025年3月期をウルトラマンの認知度・好感度向上を目的としたブランディング期間と位置づけ、2026年3月期以降を成長フェーズへ移行する計画としていた。
この期間において、中長期的なIP価値向上に向けたコンテンツ制作の仕込みは一定程度進展したものの、短期的なIP価値の引き上げや収益化には十分につながらなかった。また、“母国”である日本および成長の主軸である中国において、当初計画から乖離した推移となった。その結果、想定していた成長フェーズへのスムーズな移行は停滞し、営業利益も計画値に対して大きく未達となるなど、課題を残す形となった。
これらの反省を踏まえ、前中期経営計画における課題を精緻に分析・反映したうえで、新たな中期経営計画を策定し、持続的な再成長の実現を目指す方針としている。
円谷英二が生み出したウルトラマンは、誕生から約60年を経て世界的なIPへと成長し、現在ではアジアを中心にグローバルで1億人を超えるファンベースを形成している。 映像作品においても高い支持を獲得しており、Netflixで配信された作品は全世界で約2,000万視聴を記録し、グローバルランキングで第2位、さらに69の国・地域でトップ10入りを果たすなど、世界規模での存在感を示している。
地域別に見ると、中国では約1億人、東南アジアでは約5,000万人と大規模なファン基盤を有しているほか、日本においても約400万人のファンが存在しており、各地域で一定の認知とファン層を築いている。 このように、ウルトラマンは国内にとどまらずグローバルIPとして確固たる地位を築いており、今後の成長に向けた大きなポテンシャルを有している。
日本市場においては、TVシリーズの最新作を毎年継続的に投入しているものの、“母国”でありながらファン獲得および熱量の維持に課題が残っている。 子ども層では、主ターゲットである3〜6歳の取り込みが十分にできておらず、視聴率は低水準で推移しており、競合となる他の小児向け番組と比較してもリーチが限定的となっている。 また、大人層においても、『シン・ウルトラマン』によって一時的に高まった関心を継続させることができておらず、全体として関心度は低下傾向にある。 このように、日本市場では継続的なコンテンツ投入にもかかわらず、子ども・大人双方においてファンの裾野拡大および熱量維持の両面で十分な成果を上げられていない状況にある。
中国市場においては、特撮ヒーローが少なかった1990年代よりウルトラマンがゴールデンタイムで放送されてきたことを背景に、「ヒーローといえばウルトラマン」という強い認知を確立している。 現在も新作映像やテーマパーク展開などを通じて根強い人気を維持しており、安定したファン基盤を有している。
一方で、中国国内におけるIP関心度を見ると、他のグローバルIPと比較して依然として大きな差が存在しており、マス関心の獲得という点では課題が残る。 そのため、中国市場は強い認知と一定の人気を持ちながらも、さらなる関心度向上および成長余地を有する市場と位置付けられる。
中国市場においては、現地パートナーであるSCLAとの協働により、IPの育成と事業拡大を両立しながら成長を遂げてきた。特にカード・ブロック玩具のヒットがIP成長を牽引し、売上の急拡大と強固な事業基盤の確立に寄与した。
一方で、これらヒット商材による急成長の反動に加え、中国のカード市場全体が縮小した影響を受け、足元では一時的な市場減少局面にある。
ただし、これまでの取り組みによりライセンシー基盤は着実に積み上がっており、パートナーと連携した事業推進により、安定した基盤を活かした再成長フェーズへの移行が見込まれている。今後は、既存の強固な事業基盤を土台に、新たな成長戦略を展開することで、中国市場におけるさらなる拡大を目指す方針である。
東南アジア市場においては、2010年代より日本と同時期に放送するサイマル放送を実現するとともに、YouTube配信などデジタル展開も積極的に推進してきた。 これにより、広範な視聴機会を確保し、現在では5,000万人を超えるファンベースを獲得するに至っている
また、6つの国と地域において吹き替えによるサイマル放送を展開し、現地市場への浸透を進めているほか、ライブエンターテインメントやヒーローショーなどのリアルイベントも6以上の国・地域で展開するなど、多面的なファン接点の構築を進めてきた。
このように、東南アジアでは映像配信とリアルイベントを組み合わせた戦略により、安定したファン基盤を形成している。
各地域における事業の進捗やポテンシャル、課題はそれぞれ異なるものの、全体としては「価値創造」と「収益化」の両面において、十分な成果を上げきれていない状況にある。
日本においては、IPの母国としてコンテンツ制作と投入を担っているものの、ファン数および熱量の拡大が進まず、収益は横ばいにとどまっている。
中国は、ファンベースおよびパートナー基盤を有する収益マーケットである一方、市場環境の変化が早く、新たな価値創造を継続的に行う必要がある。 東南アジアでは、吹替およびサイマル配信によって広範なファン基盤を構築しているが、商品供給や各国市場への最適化対応は十分ではない。 これらを踏まえると、現状の課題は大きく二点に集約される。すなわち、ファンベースに対して十分な商品・サービスを提供できていないことによる「収益化の不足」と、既存ファンおよび新規層の双方に訴求するコンテンツを生み出しきれていないことによる「価値創造の不足」である。
本中期経営計画の達成に向けては、これまでの振り返りで明らかとなった「収益化の不足」と「価値創造の不足」という2つの課題に対し、それぞれに対応する施策を明確にし、両面から実行していく方針である。
まず「収益化の不足」に対しては、IPが持つポテンシャルを着実に収益へと転換することを重視する。具体的には、ファンのニーズに応えるライセンス事業の強化および自社MD(マーチャンダイジング)の展開を通じて、これまで十分に取り込めていなかった需要を獲得し、IP価値を直接的な収益につなげていく。
一方、「価値創造の不足」に対しては、IPそのものの魅力を高め、ファン基盤の拡大と熱量の向上を図る。定常的なコンテンツ投下によりファンとの接点を継続的に増やすとともに、既存ファンのみならず幅広い層に訴求するコンテンツの創出を進めることで、IP価値の強化とさらなる拡張を実現する。
これらの取り組みを通じて、「収益化」と「価値創造」の両輪を回しながら、持続的な成長基盤の確立を目指していく。
本中期経営計画においては、実行性のある現実的な施策を着実に推進することを基本方針とし、IPの価値最大化と持続的成長の実現を目指す。
特に、“母国”である日本を起点として事業基盤の立て直しと強化を図り、その上でアジア市場へと展開を広げていくことで、グローバル規模での成長を目指す戦略を採用する。
これにより、地域ごとの特性や強みを活かしながら、アジアを起点としたグローバルIP企業への進化を実現していく方針である。
本中期経営計画では、3年間での目標達成に向け、「収益化」と「価値創造」の両軸からなる“10の打ち手”を推進していく方針である。
まず「IPポテンシャルの収益化」においては、ライセンス事業の強化と自社商品の展開を柱に据え、営業改革の実行やパートナーとの関係強化を通じて収益機会の拡大を図る。また、自社MDの本格展開やAIサプライチェーンの構築により商品開発・供給力を高めるとともに、AI活用による業務プロセスの高度化を進めることで、収益化のスピードと効率を向上させる。
一方、「IP価値の強化と拡張」においては、ファンの熱量を高める作品展開と日常接点の拡大を通じて、IPの魅力を継続的に強化していく。具体的には、連続したストーリー展開や映像展開の強化によりファン体験の深化を図るほか、デジタルマーケティングの強化やライブイベントの展開によって接点を拡張する。さらに、IPリブートや他IPとのコラボ企画の開発により、新規ファン層の獲得と価値の拡張を目指す。
これら10の施策を有機的に連動させることで、IPの収益化と価値創造を同時に実現し、中期的な成長基盤の確立を図る。
IPポテンシャルの収益化に向けて、ライセンス事業および自社商品展開を軸に、収益基盤の強化を図る。
まずライセンス事業においては、営業改革を通じて提案力・生産性を高めるとともに、パートナーとの関係強化により市場での展開力を拡大していく。これにより、既存領域の深耕に加えて新たな収益機会の創出を目指す。
加えて、自社MD(マーチャンダイジング)事業を本格的に推進し、IPホルダーとしての強みを活かした商品開発を行うことで、直接的な収益獲得を強化する。あわせて、AIを活用したサプライチェーンを構築することで、商品企画から生産・供給までのスピードと柔軟性を高める。
さらに、AIを活用した事業プロセスの高度化により、マーケティング、提案、契約運用など一連の業務を効率化・高度化し、収益化の精度とスピードを向上させる。
これらの取り組みにより、IPが持つ潜在価値を確実に収益へと転換し、持続的な収益成長の実現を目指す。
日本と中国の市場規模の推移を見ると、10年前は日本市場の方が中国を上回っていたものの、その後の中国市場の急成長により、現在では両者の間に10倍以上の大きな差が生じている足元では、中国市場が約1,500億円規模にまで拡大している一方、日本市場は約150億円規模にとどまっており、市場規模の格差が顕著となっている。 こうした状況を踏まえ、中期的には“母国”である日本市場の再成長を実現し、中国市場と同等規模まで拡大させることを目標としている。このように、日本市場の立て直しは今後の成長戦略における重要なテーマの一つとして位置付けられている。
打ち手1では、国内ライセンス事業における営業生産性の向上を目的として、営業改革とAI活用を一体的に推進し、強固な営業オペレーション基盤の構築を目指す。
具体的には、営業戦略の見直しを通じて商品展開を拡大し、カテゴリ戦略やアカウント管理の高度化により営業提案力の向上を図るとともに、新たな接点となる売り場の開発・開拓を進め、商談機会の拡大につなげていく。
また、スタイルガイドや監修、契約・経理、提案業務といった一連のプロセスにデジタル化・AIを導入することで、定型業務や判断プロセスを効率化・短縮し、営業担当者の実稼働時間を確保する。
これにより、商談数・成約率・契約額の向上を通じて営業生産性を高め、収益拡大と持続的な成長基盤の確立を実現していく。
打ち手2では、重要市場である中国において、現地パートナーであるSCLAとの関係性を一層強化し、IPの育成と事業拡大の両立を図ることで、日本のみならず中国における再成長の実現を目指す。
円谷プロダクションは、映像・素材の提供やグローバルでのマーケティングコンテンツの展開、MDのデザイン・企画などを担い、IP価値の源泉となるコンテンツ・企画力を提供する。一方、SCLAは現地における棚やライセンシーネットワークの構築、ライブイベントの運営、映像作品のメディア展開などを担い、中国市場における販売・展開力を発揮する。
また、ターゲット拡大に向けた宣材・デザイン・MDへの投資を強化するとともに、長年培ってきたライセンス営業・管理のノウハウや、ライセンス管理プロセス、監修に関するAI活用などを統合することで、双方の強みを最大限に活かした体制を構築する。
これにより、中国市場においてIP価値の向上と収益拡大を同時に推進し、持続的な成長基盤の確立を目指していく。
打ち手2では、中国市場におけるさらなる成長に向けて、4つの重点施策を推進する。
まず、ブランド接点の拡大として、オフラインイベントの拡充や大型ゲームとのコラボレーション、出版展開を通じて児童層への影響力強化を図り、幅広い層への認知浸透を進める。
次に、許諾カテゴリーの拡大として、新領域へのライセンス展開を推進するとともに、大人のコアファン向け市場や広告・宣伝領域へのライセンス活用を強化し、収益機会の多様化を図る。
さらに、大型IPとのコラボレーションを積極的に推進し、他IPとの協業を通じて新規ファン層の獲得と市場拡張を目指す。
加えて、ライセンシーへの支援として、新たな素材の投入や企画提案を強化することで、商品開発力と販売力の底上げを図る。
これらの施策を一体的に推進することで、中国市場におけるIP価値の向上と収益拡大を実現し、2027年度においても前年比5~10%の売上成長を目指す。
打ち手3では、IP価値の最大化に向けて、自社MD(マーチャンダイジング)事業の本格展開を推進する。
まず、既存ファンに対しては、IPホルダーとしての強みを活かし、付加価値の高い商品を提供することで期待に応える。具体的には、コレクション性の高いフィギュアや大型アイテム、ファッショントイ、キーチェーンなど、多様な商品ラインアップを展開し、ファンの購買ニーズの高度化に対応する。
加えて、自社MDを通じてこれまで十分にリーチできていなかった新規ファン層へのアプローチを強化し、需要の創出とターゲットの拡張を図る。特に、若年層や女性層など新たな顧客層の取り込みを進めることで、IPの裾野拡大につなげていく。
これらの取り組みにより、既存ファンからの収益最大化と新規需要の創出の両立を実現し、IPの価値向上と収益基盤の強化を目指す。
自社MDの展開においては、かわいらしいデザインの商品が女性層を中心に高い人気を獲得しており、実際にECサイトおよび実店舗の双方で品切れが続出するなど、需要の高さが確認されている。
具体的な事例として、ぬいぐるみ商品やキャラクターコラボ商品などは、イベント限定商品が短期間で完売するなど高い販売実績を示しており、自社MDのポテンシャルの高さが顕在化している。
これらの実績を踏まえ、今後は特に「大人×女性」など新たなターゲット層に向けた商品展開を拡大し、これまで十分に取り込めていなかった需要を取り込むことで、さらなる市場拡大と収益成長を目指していく。
打ち手4では、AIを活用したサプライチェーンの構築により、企画から製造までを迅速に実行できる体制の確立を目指す。
具体的には、AIを用いてトレンドの予兆をいち早く検知し、商品企画に反映することで、市場ニーズを的確に捉えた商品開発を実現する。また、AIによるデザイン生成により、多様なバリエーションを短時間で創出し、企画・設計プロセスの効率化と高度化を図る。
さらに、AIと連携した製造体制を構築することで、小ロットかつ多品種の柔軟な生産を可能とし、市場変化への迅速な対応力を強化する。
これらの取り組みにより、「トレンド検知」「企画・デザイン」「少量多品種生産」の各プロセスにおいてスピードを飛躍的に向上させ、企画から市場投入までのリードタイムを大幅に短縮し、競争力の高い事業基盤の構築を目指す。
打ち手5では、ライセンス営業および自社MD開発における主要業務にAIを導入し、プロセス全体の標準化と高度化を図る。
①~➃の一連の業務プロセスを対象に、分析から商談、契約運用までを一気通貫で支援する体制を構築する。
市場・顧客分析では、データに基づくニーズ把握や営業先候補の抽出を高度化し、企画・提案フェーズでは提案シナリオや商品企画の作成を効率化する。さらに、商談・商品化の過程では監修対応や進行管理の可視化、パートナー対応情報の共有を進めるとともに、契約・運用管理においては契約条件の整理や実績管理、条件変更のアラート機能などにより運用精度を高める。
これらの取り組みにより、提案数や成約率、商品化スピードを向上させることで、IP収益化の加速を実現し、事業全体の生産性向上と競争力強化につなげていく。
IP価値の強化と拡張においては、ファンの熱量を高めるコンテンツ展開と、日常的な接点の拡大を軸に、IPの魅力を継続的に高めていく。
まず、連続したストーリー展開により作品の世界観に一貫性と継続性を持たせるとともに、映像展開を強化することで、ファンの没入感を高め、長期的な関係性の構築を図る。これにより、単発ではなく継続的に楽しめるコンテンツ体験を提供する。
また、デジタルマーケティングの強化を通じて日常的な接点を増やし、映像・商品・リアルイベントと連動した情報発信やコンテンツ配信を行うことで、ファンとの接触頻度とエンゲージメントを高める。
加えて、ライブイベントの展開によりリアルな体験価値を提供し、ファンとの接点を拡張するとともに、コミュニティとしての結びつきを強化する。
そして、IPのリブートや他IPとのコラボレーション企画を推進することで、新たな表現や価値を創出し、これまでリーチできていなかった新規ファン層の獲得を目指す。
これらの取り組みにより、IPの価値を多面的に高めながらファン基盤を拡大し、持続的な成長につなげていく。
打ち手6では、ファンに長く継続的に楽しんでもらうため、同一の世界観に基づく連続性のあるストーリー展開を推進する。
具体的には、TVシリーズを複数年にわたり継続的に展開し、作品同士のつながりを持たせることで、ファンの関心を途切れさせず、長期的な視聴体験を提供する。また、各シリーズに連動した劇場版作品を展開することで、ストーリーの広がりと深みを創出する。
さらに、毎年夏に映画を公開することで定期的な盛り上がりを創出し、話題性の喚起と新規ファンの取り込みを図る。TVシリーズと映画を組み合わせた展開により、継続的かつ周期的にファンが戻ってくる構造を形成する。
これにより、単発的なコンテンツ提供ではなく、長期的なファン関係の構築とIP価値の持続的な向上を目指していく。
打ち手7では、映像展開を軸としてファンの接触頻度とエンゲージメントを高めるため、「毎週」と「毎夏」の二つの軸による視聴習慣の定着を目指す。
具体的には、毎週のTVシリーズ放映を起点に、デジタルマーケティングとの連動やリアルタイムでの話題化を図り、視聴行動の習慣化を促進する。また、タイムシフト視聴や関連コンテンツの展開も組み合わせることで、継続的に作品へ接触する機会を創出する。
一方で、毎夏の劇場版作品をもう一つの柱とし、大型映像作品による高い話題性と集客力を活用して、定期的な盛り上がりを生み出す。さらに、過去作品の配信やテレビでの総集編放映、サイドストーリーのデジタル配信などを組み合わせ、作品世界への再接触を促す導線を強化する。
これらの施策により、「毎週TVに戻る」「毎夏映画に戻る」という二重の習慣化を実現し、ファンの継続的な関与とIP価値の最大化を図る。
打ち手8では、映像・リアル・MDを横断的につなぐ「常時接点型」のデジタルマーケティング基盤を構築し、日常的にファンと接触し続ける仕組みの確立を目指す。
具体的には、ショート動画やゲーム、連動コンテンツなどを活用し、「日常接点」となるコンテンツを継続的に生成・投下することで、ファンとの接触頻度を高めるとともに、新規層へのリーチ拡大を図る。これらのコンテンツは、生成AIと円谷IP素材を組み合わせたコンテンツ制作基盤により、効率的かつ量産的に創出される。
また、コンテンツの拡散を通じて得られたデータを蓄積し、それを商品企画やマーケティング施策へ還流させることで、より精度の高い施策立案につなげる。
このように、コンテンツの生成・拡散とデータ活用を循環させることで、日常的な接点を軸としたマーケティング基盤を確立し、ファン基盤の拡大とIP価値の向上を実現していく。
打ち手9では、リアルな「場」がファンに与える価値を重視し、ライブイベントを通じたファンとの接点拡大を継続的に推進する。
具体的には、ファンイベントやステージ・ミュージックライブをはじめ、フリーショーやグリーティングなどを全国規模で実施することで、幅広い地域における接触機会の創出を図る。
また、東京・大阪などの主要都市では夏や年末年始に大規模イベントを開催するなど、定期的な集客のハブとなる機会を設け、ファンとの関係性を強化する。
これらの取り組みにより、現在約70万人規模のファン接点を将来的には700万人規模へと拡大することを目指す。さらに、今後はライブイベントとコンテンツ制作やデジタルマーケティングとの連動を強化することで、リアルとデジタルを融合した体験価値の向上を図り、IP価値のさらなる拡大につなげていく。
打ち手9では、リアルな「場」がファンに与える影響力を重視し、国内にとどまらず海外も含めた多拠点でのライブイベント展開を推進する。
中国、タイ、マレーシア、台湾、インドネシアをはじめ、アジア各国や北米・欧州といった地域において、ファンイベントやショーを積極的に展開し、グローバルでのリアル接点を拡大していく。これにより、各地域におけるファンとの直接的な関係性を強化するとともに、IPの認知拡大と熱量向上を図る。
また、こうしたリアルイベントを単発で終わらせるのではなく、今後はコンテンツ制作やデジタルマーケティングと連動させることで、オンラインとオフラインを横断した接点を設計し、より高い体験価値の提供を目指す。
これらの取り組みにより、グローバル規模でのファン接点を拡張し、IP価値のさらなる向上と持続的な成長につなげていく。
打ち手10では、映像領域にとどまらず、トップクリエイターとのコラボレーションを通じてIPの新たな価値創出とファン層の拡張を図る。
具体的には、ファッション、アート、デザインなど多様な分野におけるクリエイターとの協業を推進し、従来のウルトラマンのイメージに新たな解釈や表現を加えることで、IPの魅力を再定義する。この取り組みにより、従来のコアファンに加え、これまで接点の少なかった層へのアプローチを実現する。
また、IPのリブートを通じて、過去の資産を現代的な価値観に合わせて再構築し、時代に即した形で再び市場に投入することで、IPの鮮度と競争力を高める。
これらの施策により、IPの表現領域を拡張しながら新規ファンの獲得を促進し、持続的な成長につなげていく。
本中期経営計画では、まず3年間で円谷IPの「収益基盤」と「価値創造基盤」を構築することを目的とする。具体的には、「IPポテンシャルの収益化」と「IP価値の強化・拡張」を軸に、日本事業の立て直しを起点としながら、アジア市場を経由したグローバル展開を推進していく。
その過程において、既存顧客との接点強化と新規顧客に向けた価値拡張の双方を進めることで、IPの成長基盤を多面的に強化する。
さらに、この3年間で構築した基盤を活用し、次の中期経営計画期間においては対象を円谷IP以外にも拡大し、複数のIPを育成できるプラットフォームの構築を目指す。
これにより、自社IPの成長にとどまらず、他社IPの価値向上にも貢献する「IPプラットフォーマー」への進化を実現し、中長期的な成長を加速させていく方針である。
本中期経営計画において培われる強みは、「アジア展開力」と「AIによるスピード」を掛け合わせた点にある。
まず、これまでに構築してきたアジアにおける事業基盤とパートナーネットワークを活用することで、各市場において商品やコンテンツを展開できる点が大きな強みとなる。具体的には、独占的なパートナー網やMD・ライブエンターテインメントのフォーマット、さらには販路としての棚など、収益化につながる仕組みをすでに保有している。
一方で、AIを活用することで、コンテンツの生成・拡散、MD開発、商品供給、ライセンシングといった各プロセスにおいて圧倒的なスピードを実現する。これにより、市場の変化に迅速に対応しながら、効率的かつスピーディーに事業を推進することが可能となる。
これら「アジア」と「AI」という2つの強みを掛け合わせることで、IPを長期的かつ大規模に成長させることができる独自の競争優位性を確立し、IPを長く・大きく育てるIPカンパニーへの進化を目指していく。
将来像としては、まず円谷IPで構築した収益基盤および価値創造の型を基盤に、IP価値向上のノウハウを確立する。その上で、自社IPにとどまらず他社IPの獲得を進め、複数のIPを共同で育成・成長させていくパートナー企業への進化を目指す。
具体的には、製作・制作への投資を通じたIP獲得を起点に、高品質な映像やリアルイベントによるピーク創出、デジタルマーケティングによる認知拡大と鮮度維持、さらに売れる形で迅速に商品を供給するMD開発機能を組み合わせることで、IP価値の最大化を図る。
加えて、中国や東南アジアといった難市場においても競争優位性を持つチャネルを活用し、グローバルでの収益化を推進する。
これら一連のプロセスを「アジア×AI」の強みのもとで高度に連動させることで、IPの認知拡大から収益化までを一気通貫で実現し、最終的には他社IPも含めて価値を高めていく“IPプラットフォーマー”としての地位確立を目指していく。
コンテンツ&デジタル事業セグメントにおいては、日本事業の立て直しとIP価値創造の取り組みを強化することで、中国および東南アジア市場においても収益拡大を図り、3年後に営業利益50億円の達成を目指す。
これまでの推移を見ると、2023年3月期の43.7億円から徐々に縮小し、2026年3月期には9.3億円まで低下しているが、本中期経営計画期間ではここからの回復・成長を実現する位置づけとなっている。
具体的には、2027年3月期に30億円、2028年3月期に37億円、2029年3月期に50億円と段階的に利益を伸ばしていく計画である。
これにより、短期的な業績回復にとどまらず、中長期的な収益成長を支える基盤を確立することで、継続的な利益拡大の実現を目指していく。
貸玉市場規模は、15兆円から16兆円程度のレンジで推移しており、全体として底堅い市場環境が維持されている。
具体的には、2022年から2026年にかけて市場規模はおおむね拡大し、16兆円前後の水準に達した後、2027年以降はやや緩やかな縮小傾向が見込まれているものの、依然として高い規模を維持している。
このように、一定の変動はあるものの、パチンコ・パチスロ市場は長期的に安定した需要を有しており、引き続き強固な市場基盤を持つ事業領域として位置付けられる。
営業所数および設置台数の推移を見ると、店舗数は減少傾向にある一方で、1店舗あたりの設置台数は拡大しており、店舗の大型化が進行している。
具体的には、営業所数は2022年以降、減少傾向であり、業界全体で店舗の集約が進んでいる。一方で、設置台数は同期間で381万台から315万台へと緩やかに減少するにとどまっている。
このように、店舗数の減少と引き換えに大規模店舗への集約が進むことで、業界構造はより効率性を重視した方向へと変化しており、今後もこの傾向が継続することが見込まれる。
設置台数別の営業所数の推移を見ると、業界全体の店舗数は減少傾向にあるものの、規模別の構成には大きな変化が見られ、大規模店舗への集約が進行している。
特に800台以上の大規模店舗は、2022年以降、一貫して増加している。一方で、300台未満の小規模店舗は大きく減少しており、店舗の統合・淘汰が進んでいる状況が確認できる。
また、中規模帯である300台〜799台の店舗についても緩やかな減少傾向にあり、結果として店舗構成は大規模店舗中心へとシフトしている。
このように、店舗数全体は縮小しつつも、より大型で集客力・効率性の高い店舗への集約が進んでおり、業界構造は量から質への転換が進展しているといえる。
販売台数の推移を見ると、パチンコおよびパチスロを合わせた総販売台数は中長期的に緩やかな減少傾向にあるものの、今後は概ね横ばい圏で推移する見通しとなっている。
販売台数は成長市場ではないものの、一定規模を維持する安定市場として位置づけられ、今後は数量拡大よりも付加価値向上や効率性の追求が重要なテーマとなる。
このような環境のもとアミューズメント機器事業セグメントにおいては、2025年5月に公表した3ヵ年事業計画に基づく各種施策が順調に進捗している。
特に2026年3月期においては、有力IPを搭載した複数機種の販売が好調に推移したことに加え、前年に販売した機種に対する増産ニーズにも通期で対応したことにより、初年度計画を大きく上回る着地となった。
今後については、2027年3月期以降の市場環境および事業進捗を踏まえ、業績目標の見直し(ローリング)を実施しながら、持続的な成長を目指す。引き続き、本事業はグループ全体の安定的な収益創出を支える中核事業としての位置付けを維持していく方針である。
パチンコ・パチスロ市場における参加人口は全体として増加傾向にあり、特に若年層の拡大が全体成長をけん引している。
総参加人口は2021年の813万人から一時的な変動を挟みつつも、2025年には865万人まで増加しており、足元では回復・拡大基調にある。
内訳を見ると、10代・20代の若年層は2021年の164万人から2025年には219万人へと大きく増加しており、他の年代と比較しても伸びが顕著である。一方で、30代以上の層は横ばいまたは緩やかな増減にとどまっている。
このように、市場全体の拡大は若年層の流入に支えられており、今後の成長においても若年層の取り込みが重要な鍵となる。
アミューズメント機器事業においては、今後の成長に向けて「若年層」「IP」「AI」の3つを主要な軸として、業界の健全化と活性化を推進していく方針である。
まず、若年層の獲得を最重要テーマの一つとし、Z世代を中心とした次世代ファンベースの創出を目指す。これにより、将来的な市場の持続的成長につなげていく。
そのために、若年層向けIPの活用を強化し、IP駆動型のマーケティングを推進するとともに、IPのマルチチャネル展開を進めていく。さらに、AIの活用については、単なる業務効率化にとどまらず、開発そのものの在り方を変革する「ゲームチェンジャー」として、商品開発力の高度化を実現する。
これら3つの取り組みを統合的に進めることで、業界全体の魅力向上と持続的な成長を実現し、アミューズメント機器事業における競争力の強化を図っていく。
アミューズメント機器事業においては、若年層の獲得に向けた取り組みの成果が顕在化しつつあり、その象徴的な事例として「東京喰種」を題材とした遊技機が挙げられる。
同コンテンツは2025年を代表するヒット機種の一つとなっており、若年層から高い支持を獲得している。具体的には、パチスロ『L 東京喰種』では若年層比率が55%に達しており、パチスロ全体平均の34%を大きく上回る水準となっている。また、パチンコ『e 東京喰種』においても若年層比率は35%と、全体平均の11%を大きく上回っている。
このように、若年層との親和性が高いIPを活用することで、新規ファンの獲得および市場の若返りに寄与していることが確認できる。
今後も継続的に若年層向けIPの取得および商品開発への投資を進めることで、次世代のファン基盤の拡大を図り、アミューズメント市場の持続的な成長につなげていく方針である。
アミューズメント機器事業においては、若年層の獲得に向け、人気IPの遊技機化を積極的に推進している。
具体的には、パチスロ『L 東京喰種』など若年層との親和性が高いIPを活用した遊技機を展開し、2025年にはパチスロおよびパチンコでそれぞれ市場投入を実施している。これにより、従来のユーザー層に加え、新たなファン層の参入を促進している。
若年層向けIPの活用は、遊技機市場における新規顧客の獲得および市場の活性化に寄与する重要な施策として位置付けられている。
今後も引き続き、若年層に訴求力の高いIPの取得および開発を積極的に進めることで、次世代ファン基盤の拡大と持続的な成長の実現を目指していく。
アミューズメント機器事業においては、安定的な収益基盤を維持しつつ、着実な利益成長を継続する計画としている。
直近では、2025年3月期に営業利益152.7億円を計上し、2026年3月期には198.8億円へと大きく伸長しており、事業の収益力は着実に強化されている。
本中期経営計画期間においては、この成長基調を維持しながら、2027年3月期に200億円、2028年3月期に220億円、2029年3月期に240億円と、段階的に営業利益を拡大していく方針である。
このように、本事業は市場の安定性を背景に、着実な利益成長と収益性向上を両立させることで、引き続きグループ全体の収益を支える中核事業としての役割を担っていく。
本中期経営計画では、連結ベースで売上高・営業利益ともに着実な成長を目指す計画としている。
売上高については、2026年3月期の1,741億円から、2029年3月期には2,020億円まで拡大させる計画であり、安定的なトップライン成長を実現する方針である。
営業利益についても、2026年3月期の174億円から2029年3月期には250億円まで拡大させる見込みであり、全体として収益成長を実現する。
このように、本計画では収益基盤であるアミューズメント機器事業の安定成長を土台としながら、コンテンツ&デジタル事業の高成長を実現することで、全体として売上・利益ともに力強い成長を目指す戦略としている。
本中期経営計画では、企業価値の向上に向けて、着実な利益成長により創出したキャッシュを活用し、IPビジネスの構造改革へ積極的に投資していく方針としている。
企業価値の主要なドライバーとしては、EPS(1株当たり利益)の向上とPER(株価収益率)の向上の両面を重視する。
まずEPSについては、アミューズメント機器事業を中心とした安定的な利益成長を確保するとともに、コンテンツ&デジタル事業の利益貢献を高めることで、全体の収益力を強化していく。
一方でPERの向上に向けては、創出したキャッシュをIPビジネスの成長に積極的に投資し、将来の成長期待を高める。また、あらゆるビジネス領域においてAIの活用を進めることで、事業成長のスピードを加速させ、企業価値のさらなる向上につなげる。
これらの取り組みにより、利益成長と成長投資を両輪として回すことで、企業価値の持続的な向上を実現していく方針である。
本中期経営計画では、着実な利益成長を実現しながら、将来的なIPプラットフォーマーへの進化に向けた基盤構築を同時に進めていく方針である。
営業利益は、アミューズメント機器事業が引き続き安定的な収益基盤として成長を支える一方、コンテンツ&デジタル事業の拡大により、両事業がバランスよく成長する構造へと転換していく。
本中期経営計画では、IP事業の成長に向けた投資を最優先とし、持続的な利益成長と企業価値向上の実現を目指す資本配分方針を採用している。
2027年から2029年の3年間においては、営業キャッシュフローとして約480億円を見込み、そのうち最大350億円を成長投資に充てる計画としている。一方で、株主還元についても並行して実施し、利益成長を基盤とした還元の拡充を継続する方針である。
このように、IPビジネスの成長投資を中心に据えつつ、株主還元とのバランスを取りながら資本を配分することで、中長期的な企業価値の最大化を図っていく。
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